1. 東大推薦では何が求められる?
東大推薦の合格者を調べると大会での受賞や研究実績が目に入ります。「自分にも出願できるのだろうか」と迷う人もいると思います。まずは大学が求める条件を確認してみましょう。
東京大学の学校推薦型選抜では、大学で学ぶための学力が必要です。そのうえで特定分野の卓越した能力や極めて強い関心・学ぶ意欲を求めています。学校長の推薦を受けて出願します。選考に使うのは書類、面接等、大学入学共通テストです。2027年度募集要項・1、5ページに、その基本方針が示されています。
賞は自分の能力を示す材料の一つです。受賞歴に加えて何を調べたか、どんな疑問が残ったかも整理します。その疑問を東大でどう深めたいかを考えてみてください。
入試の仕組みに加え、公表されている合格者の経験を紹介します。後半では自分の活動を振り返る方法と書類・面接の準備を説明します。
この記事でわかること
- 2027年度の出願条件、選考内容、日程
- 共通テスト「概ね8割以上」の意味
- 鈴木光さん・村木風海さんなど、公表された合格者の例
- 探究・活動実績を志望理由書と面接につなげる方法
- 高1・高2からの準備と出願直前に確認すること
情報確認日:2026年10月26日。2027年4月入学の学校推薦型選抜を扱います。制度は当該年度の公式募集要項を優先してください。過去の合格者の経験は当時のもので合格理由を大学が公表したものではありません。本文の練習例・準備案は編集部の提案です。
2. 出願条件と入試内容|書類・面接等・共通テストで選考
学校長の推薦と学部ごとの要件が必要
学校推薦型選抜は高校の学校長が推薦する制度です。本人だけの判断で出願できるわけではありません。2027年度募集要項では高校・中等教育学校を2025年4月以降に卒業した人、2027年3月卒業見込みの人などが対象です。学校種別などによる資格の詳細も確認しましょう。
学部ごとの推薦要件を満たすことが必要です。合格後の入学の確約と指定された共通テスト全科目の受験も求められます。出典:募集要項・4〜5ページ。
高校が推薦できる人数は原則として合計4人まで、男女各3人までです。男女いずれかのみが在学する学校では3人まで。同一学部への推薦は男女各1人までで、医学部は医学科と健康総合科学科を別区分として扱います。本人が複数学部へ出願することはできません。大学公式Q&A・Q2-4〜Q2-6も参照してください。
最初の相談先は担任や進路指導の先生です。大学の要件と高校内の推薦方針は区別し校内選考の日程、必要書類、現在の成績で推薦を検討できるかを確認しましょう。
学部を決めて出願する
募集人員は全体で100人程度。学部別では工学部30人程度、法学部・経済学部・文学部・理学部・農学部が各10人程度、教育学部・教養学部・薬学部が各5人程度、医学部医学科3人程度、健康総合科学科2人程度です。出典:募集要項・4ページ。
一般選抜は科類に出願し、入学後の進学選択を経て専門分野へ進む仕組みです。推薦では出願時の志望により後期課程の進学先が決まります。入学後は教養学部で前期課程の2年間を学び、その修了要件も満たす必要があります。出典:大学公式・選抜方法の概要、募集要項・4ページ。
出願時点で、その学部で何を学びたいかを考えておく必要があります。
選考は3つの材料を組み合わせる
| 選考の材料 | 主な内容 | 準備するときの視点 |
|---|---|---|
| 提出書類・資料 | 志願書、推薦書、調査書、学部が求める活動・学習成果の資料など | 推薦要件と実績の対応がわかるか |
| 面接等 | 第1次選考合格者に学部ごとに実施 | 自分の取組を説明し質問に応じて考えられるか |
| 大学入学共通テスト | 志望学部が指定する教科・科目 | 入学後の学修に必要な基礎学力を備えているか |
第1次選考は書類・資料で行われます。その合格者が面接等に進み、共通テストを含めて最終判定されます。「面接等」の中身は学部ごとに違います。例えば法学部はグループディスカッションと個別面接を実施します。出典:募集要項・5、19ページ。
志望学部の欄で、口頭説明、討論、プレゼンテーション等の方法と追加資料の条件を確認しましょう。他学部の体験記だけで、自分の試験形式を決めつけないことが大切です。
共通テスト8割は「それだけで受かる点数」ではない
大学は共通テストについて概ね8割以上の得点を目安としています。基礎学力を確かめるための目安であり、8割あれば合格が保証されるという意味ではありません。大学公式Q&A・Q3-6では、1点刻みの評価を目的とするものではないと説明されています。
一方指定科目を1つでも受験していなければ合格者になりません。情報Ⅰも必要で、教育学部・教養学部は文系型・理系型のいずれでも受験できます。科目の組合せや英語の換算方法は募集要項・5〜8ページの表と注記で確認してください。模試の総合得点だけで判断せず自分が使う科目と換算方法で見直しましょう。
3. どんな人が受かった?有名な合格者と大学公式の実例
以下は本人への取材や公開プロフィール、大学公式インタビューで推薦入学が確認できる例です。自分にも同じ経歴が必要だと考えるより関心をどう深めたかに注目して読んでみてください。
鈴木光さん|国際交流から生まれた疑問を論文に
テレビ番組「東大王」で知られる鈴木光さんは推薦入試で法学部への進学を決めた合格者として取材されています。
東大新聞のインタビューでは高校時代にスタンフォード大学の通信教育プログラムや国際交流に取り組んだことを紹介しています。交流で聞いた人権問題をきっかけに「名誉殺人」を調べ、半年かけて論文をまとめ推薦入試の資料として提出しました。面接では論文に関連する予想外の質問にも、自分の知識を使って答えようとしたと振り返っています。出典:東大新聞オンライン・鈴木光さんへの取材。
鈴木さんの例では交流で聞いた話が論文のきっかけになっています。自分の活動も振り返ってみてください。参加した後に気になって調べたことがあれば、その経緯が書類の材料になります。
村木風海さん|研究・開発を続けてきた例
化学者・発明家としてメディアにも登場する村木風海さんも推薦入試の合格者です。講演者プロフィールには2017年の高校2年時に総務省の「異能vation」事業に採択され、2019年に推薦入試で入学した経歴が掲載されています。二酸化炭素の回収などに関わる研究・開発を続けてきた人として紹介されています。出典:公開プロフィール・村木風海さん。
研究や制作に取り組んでいる人は完成品に加えて途中の記録も残しておきましょう。実験条件を変えた理由や改良の経緯がわかると自分の取組を説明するときに役立ちます。
ただしこのプロフィールから大学側の採点内容はわかりません。事業への採択や発明がそのまま合格条件になるとは考えないでください。
桑田向陽さん|身近な自然の観察から農学の問いへ
大学公式メディア「キミの東大」は2018年入学の桑田向陽さんを紹介しています。自宅のビオトープ、つまり生き物が暮らせる水辺の環境づくりからプランクトンへの関心が深まりました。撮影した写真を博物館の専門家に送り、質問を重ねた経験が語られています。
学部選びでは生き物と周囲の環境、人との関わりを研究したいという関心から農学部を考えたと説明しています。出典:大学公式・桑田向陽さんのインタビュー。
桑田さんは生き物そのものから周囲の環境や人との関係へ関心を広げています。同じ対象が好きでも、何を知りたいかによって選ぶ学部は変わります。自分はどの疑問を詳しく調べたいか考えてみましょう。
田村天さん|美術鑑賞から美術史の研究へ
2019年に文学部への推薦入試で合格した田村天さんは美術史への関心を大学公式インタビューで語っています。一般入試での受験を経て、浪人中に推薦への挑戦を決めた例です。美術館で見た作品を歴史の流れの中で捉える面白さや、美術の魅力を幅広い世代へ伝えたいという思いが紹介されています。出典:大学公式・田村天さんのインタビュー。
美術館で見てきた作品を歴史の中で捉え直したことが田村さんの関心につながっています。読書や鑑賞を続けてきた人も、比較したり資料を調べたりして考えたことを書き出してみてください。出願できるかは当該年度の推薦要件で確かめます。
自分の経験を振り返るときの手がかり
| 公表例 | 読み取れる取組 | 自分の準備で考えること |
|---|---|---|
| 鈴木光さん | 交流で生じた疑問を調査・論文へつなげた | 体験から生まれた問いを何で確かめたか |
| 村木風海さん | 研究・開発を継続し外部で活動が紹介された | 取組の過程と成果をどんな資料で示すか |
| 桑田向陽さん | 身近な観察を続け、専門家に質問した | 観察の蓄積から大学で何を深めたいか |
| 田村天さん | 美術への関心を歴史や学問につなげた | 好きな対象について何を研究したいか |
この表は編集部による整理です。大学が公表した共通の採点基準ではありません。さらに例を読みたい人は大学公式・学校推薦型選抜合格者の声で志望学部のインタビューを探してみてください。
4. 自分の活動を推薦要件と照らし合わせる
最初に推薦要件と提出できる資料を書き出す
まずアドミッション・ポリシー、つまり大学が求める学生像と志望学部の推薦要件を読みます。要件ごとに「自分のどの経験が対応するか」「何を提出すれば確認できるか」を書き出してください。
例えば「探究を頑張った」ならテーマ、期間、方法、成果物、他者から受けた評価を分けます。対応する経験が薄い要件は文章の表現だけで埋めようとせず先生と相談しましょう。
法学部では社会に関わるテーマの論文が提出資料の例に挙げられています。法学・政治学のテーマに限らず、コンクールでの入賞も必須とはされていません。一方で、論文の内容や出典の示し方などに指定があります。出典:募集要項・18〜19ページ。このように賞の有無だけでなく学部が何を求めるかを原文で読むことが大切です。
活動の目的・方法・結果・限界を整理する
次の4点をまず1枚のメモにしてください。提出書類の指定様式とは別に作る、準備用のメモです。
- 問い:何を明らかにしたかったか。先行する研究や説明の何が気になったか。
- 方法:どの資料、観察、実験、比較を使ったか。その方法を選んだ理由は何か。
- 結果:何がわかったか。それを示すデータや資料は何か。
- 限界:今回の方法では何が言えないか。次は何を確かめたいか。
成功した話だけを並べる必要はありません。失敗した実験でも、原因を検討し条件を変えて確かめた記録があれば、自分の考え方を説明できます。ただし失敗経験があるだけで評価されると決めつけず、学部の要件とのつながりを確認しましょう。
グループ活動は自分が担当した作業や提案と、他のメンバーが行ったことを分けて書きます。チーム全体の成果をすべて自分の実績として書かないことも大切です。
今の取組に足りない知識や方法を考える
「研究を続けたい」と考えたら何を学ぶ必要があるのかを言葉にします。統計、史料の読み方、実験手法、制度の比較など、現在の取組で不足しているものを挙げてみましょう。
そのうえで志望学部の授業、カリキュラム、研究分野を公式サイトで調べます。教授名を並べるだけではその大学で学びたい理由は伝わりません。「今の疑問を、どの学びによって掘り下げるか」を説明してください。研究室への配属や指導を入学前から約束されたものとして書くことも避けましょう。
共通テストと一般選抜の勉強も、予定に入れる
探究や書類作成に時間を使うほど、教科学習を後回しにしがちです。週の予定に共通テストの演習時間を先に確保し、その残りで書類を進める方法を検討してください。
推薦が不合格だった場合には東大の一般選抜を受験できます。ただし別途出願が必要で、推薦の合格発表を待ってからでは一般選抜の出願に間に合いません。出典:大学公式Q&A・Q1-3。推薦の結果にかかわらず、次の受験に必要な勉強と手続きを続ける計画にしましょう。
5. 志願書と面接で取組を説明する
志願書は経験の紹介から学ぶ理由へ進める
志望理由を伝える書類は学部ごとの指定様式に従って作成します。共通の作文を全学部に使えると考えず、問われている項目と記入条件を確認してください。公式の提出書類ページに、当該年度の様式が掲載されています。
下書きでは「関心を持った経験」「自分で取り組んだこと」「残った疑問」「大学で学びたいこと」をつなげてみましょう。次の表は編集部の練習例で、合格者の文章ではありません。
| NG例:内容が伝わりにくい表現 | OK例:具体化する方向 |
|---|---|
| 「世界の問題を解決したい」 | 調べた問題、使った資料、そこから見えた制度上の疑問を示す |
| 「研究コンテストで受賞しました」 | 研究の問い、工夫、本人の役割、結果と限界を示す |
| 「東大には優秀な先生がいるからです」 | 自分に必要な研究方法と学部の授業・分野との接点を書く |
| 「地域活動をたくさんしました」 | 活動の中で観察した課題と自分で確かめた事実を説明する |
説明の練習には志望理由書の書き方ガイドも参考にできます。文章を整えた後は必ず東大の指定項目に答えているかを見直してください。
資料は量を増やす前に主張との対応を確認する
活動資料を整理するときは「何を示す資料か」を1点ずつ確認します。受賞なら大会名・年度・部門・結果、研究なら目的・方法・結果、制作なら本人が行った設計や改善が読み取れるようにします。
探究レポートには参照した資料と自分で得たデータを区別して記録しましょう。他人の文章や図表を使う場合は出典を示します。立派に見せるために行っていない分析や実験を書き足してはいけません。
2027年度は「学部が求める書類・資料」を1つのPDFに統合し、資料一覧はExcelのまま提出します。アップロードする6ファイルの合計サイズは100MBまでです。出典:募集要項・12〜13ページ。読みやすさの確認も、提出準備の一部と考えましょう。
面接は暗記より根拠を説明する練習をする
以下は想定練習用の質問です。大学が公表した出題予告ではありません。
- そのテーマを選んだ理由は何ですか。
- 先行研究と比べて、どこに違いがありますか。
- その結果だけで、結論まで言えるのでしょうか。
- 別の説明が成り立つ可能性はありませんか。
- グループの中で、あなたが担った仕事は何ですか。
- なぜ、その学部で学ぶ必要がありますか。
先生などに質問してもらい、「結論→根拠→まだわからない点」の順で説明してみてください。想定していなかった質問にはわかる範囲と推測を区別して答える練習が役立ちます。知らないことを知っているように話すと後の説明との整合性も崩れます。
討論がある場合は自分の主張を言う練習に加え、相手の意見を正確に受け取り、論点を整理する練習も行いましょう。プレゼンテーションがある学部では指定時間、資料形式、提出期限を先に確認してください。
6. 2027年度の日程と学年別の準備スケジュール
本人の志願票作成と学校による出願は別の手続き
| 手続き・選考 | 2027年度の日程 |
|---|---|
| 本人によるインターネット入学志願票作成 | 2026年10月15日(木)正午頃〜11月6日(金)17時 |
| 高校による書類・資料アップロード | 2026年11月1日(日)正午頃〜11月6日(金)17時 |
| 第1次選考結果発表 | 2026年12月1日(火)15時 |
| 面接等 | 2026年12月12日(土)・13日(日)の学部指定日 |
| 第1次選考合格者の共通テスト成績請求チケット提出 | 2026年12月22日(火)必着 |
| 共通テスト本試験 | 2027年1月16日(土)・17日(日) |
| 最終合格者発表 | 2027年2月10日(水)12時頃 |
| 入学手続 | 2027年2月11日(木)〜17日(水)必着 |
出典:募集要項・2、9〜13ページ。文学部は面接等を両日にわたって実施し、工学部は大学が指定するいずれか1日です。他学部は12月12日です。教養学部の会場は駒場、他学部は本郷とされています。
本人が志願票を作成するだけでは出願は完了しません。 検定料の支払い、必要資料の準備を進め、学校が取りまとめてアップロードします。本人によるアップロードや、郵送での出願は受け付けません。出典:募集要項・10〜12ページ。
公開日の10月26日時点で、本人の志願票作成期間は始まっています。今年受ける人は新しい実績を急いで増やすより学校の推薦、指定様式、資料の完成状況、提出担当をすぐ確認してください。共通テストの出願も、推薦への出願とは別の手続きです。
高1・高2は好きなことを記録しながら深める
| 時期 | 優先する準備 | 残しておくもの |
|---|---|---|
| 高1 | 興味のある分野を探し読書・観察・制作等に取り組む | 疑問、読書メモ、活動の日付 |
| 高2 | 問いを絞り、調査・実験・発表を重ねる | データ、成果物、受けた助言、改善記録 |
| 高3春〜夏 | 推薦要件と活動を照合し学校と相談する | 要件と根拠資料の対応表、学習計画 |
| 高3夏〜出願 | 当該年度の要項で書類を作り、学校と確認する | 指定書類、資料一覧、提出用ファイル |
| 出願後 | 面接等の準備と共通テスト・一般選抜対策を続ける | 説明練習の記録、科目別の復習計画 |
高1・高2なら成果がすぐに出なくても疑問と検証の過程を残すことに意味があります。図書館の資料を比較する、身近な現象を継続観察する、制作物を改良するなど、自分が繰り返し考えられる活動を探しましょう。
発表やコンテストは他者の意見を得る機会としても使えます。ただし参加数を増やすこと自体を目的にせず助言を受けて何を変えたかまで記録してください。
出願前のチェックリスト
- [ ] 志望学部の推薦要件と自分の根拠資料を照合した
- [ ] 出願資格、校内選考、学校の推薦人数を確認した
- [ ] 合格した場合に必ず入学する意思を確認した
- [ ] 当該年度・志望学部の指定様式を使っている
- [ ] 本人の役割、他者の貢献、出典を区別して書いた
- [ ] 学校と支払い・書類確認・アップロードの担当を共有した
- [ ] 共通テストの出願と指定科目、成績請求手続きを確認した
- [ ] 不合格の場合に備え、一般選抜の出願予定を確保した
なお他の国公立大学の学校推薦型選抜・総合型選抜や、UTokyo College of Designとの併願には制限があります。募集要項・3ページを確認し、自己判断で複数の出願を進めないようにしましょう。京都大学の特色入試(推薦・総合型)の仕組みと比較したい人は京大特色入試の対策記事も参考にしてください。
7. 活動のメモを持って先生に相談する
出願を考えるならまず自分の活動と推薦要件が対応するかを確かめてください。実績の名前だけでなく自分で考えて取り組んだ部分まで先生に説明できるようにします。
今日、まず行いたいことは3つです。
- 公式募集要項の志望学部のページを読み、推薦要件と必要資料を抜き出す。
- 自分の活動を1つ選び、「問い・方法・結果・限界」を1枚にまとめる。
- そのメモと成績の状況を持って担任や進路指導の先生に相談する。
メモを作る途中で説明できない所があれば、記録や資料に戻ってみてください。大学で学びたい理由も今の取組でわからなかったことから考えていきましょう。